強制徴収できるようになったのに
2010年1月から公的年金保険料の悪質滞納者に対し、日本年金機構が強制徴収を国税庁に委任できる制度が導入されたにもかかわらず、一度も実施されていないことがわかった。読売新聞が報じている。
政府では2010年に社会保険庁を解体し日本年金機構を発足させた際、国民年金保険料の悪質滞納者への強制徴収を厚生労働省を通じて国税庁へ委任できるように法改正した。
悪質滞納者の要件は以下の通り。
〈1〉保険料の滞納が2年以上
〈2〉国民年金は滞納者の所得額が1000万円以上、厚生年金は滞納額1億円以上
〈3〉財産を隠匿
肝心の保険料納付率アップは・・・?
厚労省では導入当初、悪質滞納者に当たるのは数百人とみていた。しかし、同機構の職員が滞納者に「保険料を納めないと、国税当局に委任することになる」と告げるとその場で納付したり、分割納付を申し出たりするケースがあるといい、強制徴収までは至ったケースはないが制度の効果はでていると話す。
ただし、国民保険の「悪質滞納者」の中には税金はきちんと納めている者もおり、国税庁の関係者は「日本年金機構がなめられていると言ってもいい」と指摘する。
結局、強制徴収制度は「保険料の納付率アップ」としては効果を発揮できていないといえる。
自営業者や無職の人を対象とする国民年金保険料の納付率は2010年度には60%を割っている。サラリーマンが加入する厚生年金の保険料の滞納事業所は10年度に約16万2400と過去最多を記録している。

年金滞納の強制徴収ゼロ…背景に省庁間対立?
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120106-OYT1T00732.htm日本年金機構
http://www.nenkin.go.jp/