この上映イベントは2回目
力作であっても配給会社がつかないなどの理由で、なかなか日の目を見ない作品にスポットを当てるイベント「オールモスト・フェイマス-未配給映画探訪」が12月19日、東京・渋谷のアップリンクで行われた。ここで上映された映画の中で『あんたの家』に注目したい。
第32回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)でグランプリを受賞した作品で監督は自衛隊出身という異色の経歴を持つ山川公平監督。第1回は同じく、本年度のPFFで審査員特別賞を受賞し、監督の実体験をもとに性同ー性障害に悩む高校生を主人公にした『僕らの未来』(参考)
昨年のPFFで同作品と出会い衝撃を受けたイベントの企画者であるライターの鈴木沓子氏は、無名監督の中編作品になかなか配給が付かない現実に自ら立ち上がった。鈴木沓子氏は
「観客の私たちが“この映画を見たい“と声をあげないと、スクリーンで見られる自由はないのだと痛感。このイベントで、何とか配給や他館上映につなげたい」
と語っている
映画のあらすじ
モデルは山川監督がかつて住んだアパートの隣人だ。寝たきりの夫を妻が支えている老々介護という難しいテーマに斬りこんでいる。夫は大腸がんを患っていることから人工肛門(ストーマ)を付けている設定も生々しく再現している。
この夫婦の妻は介護に疲れ果てている。時には夫の呼び出し音を無視したりしてしまう。妄想的不安を抱えながら、やりたい事も出来ず借金も嵩んで、ある時妻は精神的に追い詰められて夫を殺しそうになる。冒頭から人工肛門となって動けない夫を難儀しながら介護する妻の姿にかなりリアルなものがある。
幻想と現実が混じりあいながら描かれて、日常生活が送れなくなって荒れていく妻の姿が哀しく厳しく描かれている。精神的に追い込まれていく妻の描写も実に味のある描写になっている。20代でしかも初監督作で、これだけの作品に仕上げてしまう山川監督はかなりの才気だろう。
この作品は、ロッテルダム国際映画祭や、水戸短編映像祭準グランプリなどを受賞をしている。老々介護について考えさせられる。

シネマトゥデイ
http://www.cinematoday.jp/page/N0037959